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2016.02.16 (Tue)

『老犬センター』

先日、宮崎市で拓殖大学学友会総会が開催された。
優に100名を超す会員がいる筈なのに、集まるのは毎年同じ顔触れ。
『坂元さんが支部長の時、数多く集まったが、何故少なくなった?』と先輩が。

痴れたことである。
100年以上の開きがあると、学んだ環境も違えば気風も変わる。
つまり、話が合わないのである。

寮歌を唸り、先輩後輩の序列を重んじ、『押忍!押忍!』を連発する。
昭和の50年代までに学んだ者には聞き慣れた雰囲気が、後の世代には異様に思える。
『やっぱり、年代別、世代別に集合したほうが良いのでは?』と申し上げて置いた。

思い出として、『犬を食った』話が交わされた。
吾も入学したころに聞いたから、別段、驚く話ではない。
なにしろ、ソーセージの原料に、『ドブネズミ』を混ぜ込んでいた時代だから。

戦時中の食糧不足の時代、犬を捕まえて食していたらしい。
朝鮮では現在でも食されていると聞いたが、『特に赤犬が旨い』らしい。
『殺して2日ほど土中に埋めておくと、殺したてよりも美味だ!』と年配者が。

祖父は、戌年生まれなのに、犬や猫を病的に嫌った。
猫は、天井裏に潜む鼠を捕食するから飼っていたが、近寄ることさえ嫌がった。
『犬を飼っていいか?』と聞いたとき、怒髪天を突くように怒ったものである。

高校時代に、実家を出て市営住宅に住むや、子犬をもらってきた。
犬は、飼い主には従順で、誰を一番に頼りにすべきか、見分ける天才である。
そして、家内に於ける序列も瞬時に悟るから、賢いことこの上ない。

山道を歩くと、主人よりも前を歩いてゆく。
時折、道を外れて山中に潜り込むが、匂いを頼りに戻ってくる。
蝮から鼻を咬まれても、腫れるだけで命を失うことはない。

地鶏の放し飼いを始める時に、同腹の仔犬6匹を貰ってきた。
子供の頃から、鶏と一緒に飼えば手出しをしなくなる!と云う。
『主人が大切にしている鶏に手出しは出来ない!』と教え込むのだ。

果たして、犬の餌を狙って鶏が集中してくる。
犬は、情けないような顔をして吾を見上げているが、仕方なく、餌に向かう。
が、その時には、既に犬の飯は空っぼになっている。

黒い顔の中央、鼻筋のところが白くなっている仔犬がいた。
雌犬だったが、一番、身体がひ弱で、成犬になるか否かが危ぶまれる。
『白チョン』と名付けていたが、手伝いの守永さんは『一番いい犬になる』と看破していた。

その『白チョン』の子に、🐼そっくりがいて『パンダ』と名付ける。
利口な仔犬で、鶏舎から遠く離れている鶏を、怪我をさせないよう追い、中に入れてゆく。
やがて、猟師の石山さんが連れ帰ったが、猪狩りで勇名を馳せたという。

事情があって地鶏を止めたが、犬の引き取り手は多かった。
が、『白チョン』だけは手元に置き、毎日通う『檜山』の入り口に繋いだ。
餌は『ドッグフード』だから、小屋の中に多目に入れておく。

吾が山に居る間は放すのだが、植林に来ていた小母さんが訝って言う。
『この犬は、道端に来てはコ゜ロン、ゴロンと座るが、妊娠しとるとじゃが』
もう、老境に入っている年だが、妊娠は間違いなかった。

遠く、坂元棚田から5キロの山道を辿って通ってくる雄犬。
身体は、痩せ衰えているのに、『白チョン』の所に一ト月通った。
排卵も少ないからだろう!1匹しか生まれなかった。

吾の選挙の時、『裕一ちゃんの山に居る犬が、側溝の溜桝に堕ちている!』と。
保健所に連絡して引き上げ、殺処分されたらしい。
目が見えずに、夜目が効かずに堕ちたのだろう。

鶏小屋での餌は、押し大麦を味噌汁で炊き、ミンチと割れ卵を入れていた。
山では、ドッグフードだったから、糖尿病を発症したのだろう。
以来、十数年もの生涯を辿る生き物は飼わないことにした。
吾の終焉の方が速いからだ。

が、子供が巣立って独立し、夫婦、もしくは一人暮らしのお年寄りは寂しくてしょうがない。
そこで、座敷で飼える犬や猫を求める。
ペットとして飼われているが、元々は野生の畜生である。

それを甘やかして育てると、自立心を失っていくし、生命への本能も失っていく。
飼い主も高齢化し、ペットの方が長生きだから、どうするのかなぁ~と案じていた。
『老犬センター』というのが開業して、そこで面倒を見てくれるらしい。

この人間社会、優しくなったのか、ゆとりがでてきたのか?
満足に食ってゆけないお年寄りもいるのに、完全介護の犬もいる。
子供が独立して、その寂しさをペットで補う心持も判らない。

動物としての本能を捨てさせ、置物に替えられるペットは、幸せなのだろうか?
去勢され、避妊させられて、恋も知らない。
人間の勝手気ままに作り替えられた、生きた置物。

出産はしないから、遺伝子には無関係だが。
でも、同居する人間の肉体には、蝕まれるモノがあるかも。
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