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2016.02.02 (Tue)

『一笑一若』

幼いころは、笑窪が両方の頬にあった。
笑うと極端に凹むから、それが『可愛らしさ』に繋がっていたらしい。
今では、片方だけが極端に凹むが。

中学生から高校時代、面白いことがあると大きな声で笑っていた。
ワザとやっているのではないのだが、『あっはっは』と、大声が出てしまう。
クラス全員が笑っている中で、いつの間にか皆が振り返って吾を睨んでいる。

高校2年の時、小学生が吾を呼びに来た。
『本町橋下の河原で、高校生が待っている!』と言うのだ。
行ってみると、私立高校生と思しき男子生徒が10人ほど。

吾を取り囲んで、『オンナの子と歩いていて、ミヤガッチョルんじゃないか?』と吐く。
『なんでそんなことで呼び出されなきゃあいけないのか?』と笑顔で。
『なんじゃ、その態度は!』と言うが、手出しはしなかった。

月曜日の1時限目、ホームルームの時間に、吾を含んだ3人が担任から呼ばれる。
前に出てゆくと、『髪が伸びているんじゃあないか?刈り上げているんだろう』
そう言って、指に髪を挟んで伸び具合を見ている。

『今から床屋に行って、刈って来い!』
今町の門川理髪店に行くと、『今日は月曜日で休業だ!』と。
仕方ないから、『一筆、書いて下さい!』

それを担任に提出した。
『そういうことが生意気なんだ!』と、気の毒そうに笑みを浮かべた吾を睨む。
歯軋りしながら、『絶対、明日は刈れよ!』と、怒りを隠しながら。

学生の頃、先輩が説教を垂れる。
語彙に間違いがあったので、ニヤリと笑うと激昂した。
『1時間、座禅を組め!』との制裁が。

可笑しい時には、笑う。
不謹慎な場所では、下を向いて忍び笑いする。
笑うと相手に失礼な場面もあるから、笑いもTPОが必要だ。

『笑わん殿下』と呼ばれた政治家がいた。
三木派を継いだ、河本敏夫衆院議員だ。
造船屋の財閥だったが、笑顔を見せたことがない。

『笑ったら可愛いねぇ~!笑窪も素敵だし』と、女性から言われること度々だった。
選挙用の写真撮影でも、『もう少し、笑顔を作ったら!その方がいい写真が出来るのに!』
そう言われるが、作り笑顔に至るまでに、頬が引きつってしまう。

座談会を開いても、真剣に政策を語るから、笑顔とは程遠くなる。
笑顔は親しみを呼ぶ!と判っているが、ぎこちなさが際立ってくる。
『話は上手いけど、取っ付き憎いよなぁ~!』で、選挙に苦労した。

昨夜の、『鶴瓶の家族に乾杯』。
『コマーシャル撮影で慣れているから』と、絶妙な笑顔を見せている。
『なーんだ!笑顔はつくれるのか?』と、感心してしまう。

ゲストの加藤茶が、色紙に『一笑一若』と書いた。
笑いが多い程、若くなるということなのだろう。
だったら、吾は老いて行く一方になる。

自身でも思うが、最近、余り笑ったことがない。
思い出し笑いもないし、テレビも笑える場面はないし、書物も深刻な内容が多い。
車で走っていても、とても笑いを誘うような番組に出くわさない。

自ら、笑いから逃げているのではないのに、笑いが少ないのは何故だろう。
笑いを忘れているから、笑窪も消えているかもしれない。
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